稲村公望
(衆議院比例区東海ブロック・国民新党公認候補)
構造改悪路線を見直せ
中央大学大学院客員教授 稲村公望
(『月刊日本』08年2月号より)
まさに一目瞭然である。
日本の1人当たりの国民総生産は、この12年間(1995〜2006年)で大幅に順位を下げた。バブル後の急激な信用収縮は鬼のような日銀の施策によるものであったし、鉱工業生産の図表をみれば、逆噴射の財政政策の数々は明らかである。
その間、「宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える」小渕総理時代には、短期間ながら持ち直した。彼が、世界一の借金王と揶揄され、江沢民の不敬を軽くいなしながら、日本の再生を目指した努力は、数字で証明されている。しかし、その後の小泉・竹中政治は、日木の経済を完全に凋落させた。
急激に順位を伸ばしたノルウェーあたりも、バブルがなかったわけではない。総じてヨーロッパでは、早期にバブルを克服して、安定的な成長路線をとったのだ。
ところが、日本はというと、死に至る病のデフレ政策を後生大事に維持したり、不良債権処理として銀行つぶしに狂奔した。今にして思えば、日本の富は日本の国内の経済成長のためではなく、外国金融資本を経由して、外国の市場化のために使われたのだ。
サブリンファンドとかで、シンガポールがタイの電話会社を買収し、北京政府の代理人が簡易保険保養センターを物色するのと同じように、郵政資金を中小企業や農業振興などのために活用すればよかったのだ。ところが、民営化と称して巨額の国民資産を、海外に流出させる儲け話に安易に乗っただけである。
規制緩和によって何かが活性化されたわけではない。タクシーが過当競争になって、いつの間にか値上げをするといった結果を招いただけ、と同様のことだ。
営々として創り上げてきた国民皆保険制度などを破壊して、一部の運中が、あるいは、外国保険会社が巨万の利益を上げることを官民挙げて黙認しただけのことではないのか。
フランスやドイツは、さっさと市場原理主義を脱却して、水道を民営化しようとしたヴィヴェンディや、亜流のフランクフルトの銀行頭取などを失脚させている。
「ヨーロッパの病人」といわれたイタリアですら政権を交代させ、順位こそ後退しているが、1人当たりのGNPを増加させている。また、スペインはマドリッド市街を改装することに成功している。
日本では、グローバル化の掛け声ばかりで、おこぼれさえも頂戴していない。
この図表を作成した、観光経済の分析に詳しい渡久地明氏によれば、沖縄にノルウェーからの観光団が訪れるようになったという。
しかも、日本の高度成長期の農協の海外旅行のように、旗を持って隊列行進する格安団体の観光客ではなく、単価が150万円を超える豪華版だった由である。
経済政策の常道に戻して、日本経済の凋落をくい止めなければならない。あらゆる民営化、規制緩和策などの構造改悪路線を見直さなければなるまい。
追記:その後、IMFのデータを調べたところ、世界180カ国余で1995〜2007年で一人当たりGDPが減ったのは、日本、ジンバブエ、アルゼンチンなど8カ国しかなかった(ビックリ)。参考にそのグラフも下に示す。(渡久地明)