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てぃーだブログ › 稲村公望さんを国政に送り込もう! › 稲村公望論説 › 新自由主義に抵抗する救国勢力よ、結束せよ(2)

2009年08月10日

新自由主義に抵抗する救国勢力よ、結束せよ(2)

新自由主義に抵抗する救国勢力よ、結束せよ(2)


稲村公望
(衆議院比例区東海ブロック・国民新党公認候補)


「抵抗勢力」こそ、真の「救国勢力」だ
新自由主義に抵抗する救国勢力よ、結束せよ
中央大学客員教授 稲村公望
(『月刊日本』08年10月号より)
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■新自由主義は共同体を根こそぎ壊滅させる危険思想
 フリードマンは「危機のみが真の変化をもたらす。危機が起きれば、現在ある政策の肩代わりを提案して、政治的に不可能であったことを政治的に不可避なことにしてしまう」と述べている。いわば、災害に備えて缶詰や水を備蓄しておくのと同様に、災害に備えて新自由主義政策を一気に進めるべく政策を準備しておくというのだ。

 このような発案の元には、フリードマン自身の経験が影響していると見られる。70年代中ごろに彼はチリの独裁者ピノチェト政権の顧問をしていた。ピノチェト政権にはシカゴ大学経済学部の出身者が大量に登用されており、「シカゴ学派の革命」とも呼ばれた。事実、ピノチェト政権においては減税、自由貿易、民営化、社会政策予算の削減、規制緩和が、急激に行われたのである。これらは、スピードが大事であるとして、一度に全てを変えてしまうという方法が採用された。

 ここから、「ショック療法」という概念が、新自由主義に滑り込んできたのである。独裁政権下においては、それは経済的ショックと同時に、拷問という肉体的ショックとも併用されて新自由主義改革が進められた。

 「敵の意志、考え方あるいは理解力を制御して、敵を文字通りに、行動あるいは対応する能力を失わせる」という「ショック・ドクトリン」が、生まれたのである。

 クライン女史は実証的に、新自由主義がこの「ショック・ドクトリン」によって推進されてきたことを明らかにしている。たとえば、スリランカにおけるスマトラ沖地震による津波被害の復興である。そこでは、被災者をパニック状態に落とし込む一方で、海岸線をリゾート化する計画が進められていた。ニュー・オーリンズでもやはり、住民の土地・家屋を修復することもなく、ただ更地にすることだけが進められたのである。

 新自由主義にとって邪魔なのは、市湯原理主義に反するような非資本主義的行動や集団である。そうした非資本主義的集団として、地域共同体や、歴史や伝統に根ざした「共同体」が存在するが、新自由主義はこうした集団を徹底的に除去する。災害復興の名目で公共性、共同体を奪い、被災者が自らを組織して主張を始める前に、一気に私有化を進めるのである。これは、日本で行われた新自由主義改革とも一致している。

 郵政民営化は公共財産である郵政事業を民営化するという、典型的な新自由主義政策であった。民営化後、郵便局にはテレビカメラが取り付けら札、『郵政百年史』といったような郵政の歴史と文化を記した本も撤去している。

 ジョージ・オーウェルが『1984年』で書いたような、極めて不自然で、歴史性を欠いた組織に一気に改変されている。オーウェルは「我々はあなたを完全に空っぽにし、その体に我々を注入する」と不気味な予言をしている。

■「ショック・ドクトリン」から見えてくる世界
 衝撃を与え、一気に新自由主義改革を進めるという「ショック・ドクトリン」から世界を見ると、世界は今までとは異なる姿で立ち現れてくる。「改革」のために、平然と人権侵害が行われてきたことに気づくのだ。アルゼンチンでは3万人を抹殺して、シカゴ学派の提唱する政策を実現した。1993年にはエリツィン政権下のロシアで国会放火事件が起き、その後、国有資産は投げ売りされ、「オリガルヒア」という新興の超資本家が生まれた。

 1982年のフォークランド紛争も、炭鉱労働者のストライキを破壊して、西洋で最初の民営化を強行する結果になった。1999年のNATOによるベオグラード空爆も、結局、旧ユーゴでの民営化に結びついたのである。アジアでは1998年にアジア通貨危機が仕掛けられたが、これによってIMFが介入し、民営化するか、さもなくば国家破綻か、が迫られた。

 その結果、国民の意思ではなく、日本の経済財政諮問会議のような一部の「経済専門家」と称する新自由主義者によって、国の政策が支配されることになったのである。

 また、天安門事件の大虐殺も「ショック・ドクトリン」の一環と見ることもできる。事件の前年9月、フリードマンが北京と上海を訪問している。中国が中国流の「ショック・ドクトリン」を利用して、開放路線を発動したと考えられるのだ。今年の四川大地震では、現地は復興特需に経済が活発化しているという話も聞こえてくるのだが、中国版災害資本主義が発動されている可能性は高い。

 かつて、アイゼンハワー時代には、アメリカ国内ではこの「ショック・ドクトリン」は適用されていなかった。おそらく、軍産複合体の行き過ぎを懸念したのである。しかし、レーガノミックスを経た95年ごろから、ネオコンが中心になってショック療法型の経済政策が本格化する。

 そして、9・11のとき、大統領府はフリードマンの弟子たちで埋め尽くされる。ラムズフェルド国防長官(当時)はフリードマンの親友である。「テロとの戦い」が叫ばれ、恐怖が煽られた。そして何が変わったか。軍隊の民営化、戦争の私有化である。戦地を含む治安維持関連の民間外注が2003年には3,512件、2006年には11万5,000件にまで増えた。

 現代の新自由主義下においては、戦争の経済的役割が全く違ったものになった。かつては、戦争によって門戸を開放し、その後の平和な時代に経済的に干渉するという手法であったが、いまや、戦争自体が民営化され、市場化されているのである。だから、確実に儲かる。

 クライン女史によると、現にイラクではPMC(プライベート・ミリタリー・カンパニー)が米正規軍13万人に対して40万人を派遣しており、ハリバートン社は2007年には200億ドルの売上をあげ、アメリカ資本のみならずイギリスやカナダ資木も戦争ビジネスで澗っているという。カナダのある会社は、プレハブを戦場に売ることで儲け、危険な戦場で働く人のために保険会社が莫大な売上をあげているとのことである。

 このように見てきたとおり、新自由主義は、その「リベラル」で柔らかいイメージとは裏腹に、政治的自由とは一切関係なく、それどころか、災害がないならば災害を起こせばよい、ショックを与えて、一気に改革を進め、共同体も歴史性も破壊し、市場原理主義というのっペりとした原則だけで動く世界を構築しようという危険な思想である。

 新自由主義者にとっては、そのような共同体も歴史も存在せず、無機質で根無し草な、ただ市場原理だけで説明ができる世界というのは、ユートピアに見えているのかもしれない。だが、人間はそのように合理性だけで生きている存在ではない。非合理的感情や共同体意識、歴史性があってこそ人間であり、そうした矛盾も非合理も抱え込んだ人間存在の幸福を図るのが「政道」である。

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Posted by 稲村公望ファン at 11:55│Comments(1)稲村公望論説
 
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